開催テーマ:「和牛新時代 地域かがやく和牛力」

  • 主  催:公益社団法人全国和牛登録協会
  • 運営団体:第12回全国和牛能力共進会鹿児島県実行委員会

最終比較審査

会期 2022年(令和4年)10月6日(木)~ 10月10日(祝・月)
会場 種牛の部 鹿児島県霧島市 牧園地区
肉牛の部 鹿児島県南九州市知覧町 (株)JA食肉かごしま南薩工場

開催のねらい

「能力共進会」の名称のもと、和牛の能力と斉一性の向上を目指す本共進会も、今回で12回目を迎え、令和に入って最初の共進会となります。本共進会の特徴は、日常の登録事業を通じて、それぞれの時代の要求に応じた形で和牛改良を進めていくため、改良上の狙いを出品区の設定に盛り込み、本共進会に取り組むことによって、将来につながる優秀な素材を生産及び発掘し、これを出品展示することによって、その成果を確認し、全共後に引き継いでいくことにあります。
そのため、本共進会では、開催のねらいに基づくテーマを掲げ、その実現に努めてきました。これまでの共進会では、

第1回(昭和41年・岡山県) 「和牛は肉用牛たりうるか」
第2回(昭和45年・鹿児島県) 「日本独特の肉用種を完成させよう」
第3回(昭和52年・宮崎県) 「和牛を農家経営に定着させよう」
第4回(昭和57年・福島県) 「和牛改良組合を発展させよう」
第5回(昭和62年・島根県) 「着実に伸ばそう和牛の子とり規模」
第6回(平成4年・大分県) 「めざそう国際競争に打ち勝つ和牛生産」
第7回(平成9年・岩手県) 「育種価とファイトで伸ばす和牛生産」
第8回(平成14年・岐阜県) 「若い力と育種価で早めよう和牛改良,伸ばそう生産」
第9回(平成19年・鳥取県) 「和牛再発見!-地域で築こう和牛の未来-」
第10回(平成24年・長崎県) 「和牛維新! 地域で伸ばそう生産力 築こう豊かな食文化」
第11回(平成29年・宮城県) 「高めよう生産力 伝えよう和牛力 明日へつなぐ和牛生産」

 

というテーマが設定され、それぞれ所期の成果を収めてきました。

前回大会では、第10回大会で掲げた「和牛維新」の達成を目指し、全国の繁殖雌牛の平均分娩間隔400日以内を目標に、育種価を活用した分娩間隔の短縮や種牛能力の高い雌牛の地域内保留による生産基盤の強化に取り組みました。同時に、遺伝的多様性の維持・拡大のため、地域の特色ある牛づくりの取り組みを強化するとともに、「風土の産物」とも呼ばれる和牛の魅力の発信に努めました。そのひとつとして、和牛肉の「美味しさ」を新たな角度から見つめ直す取り組みも行いました。育種価評価事業により、和牛の産肉能力とくに脂肪交雑については飛躍的に向上してきたことも踏まえ、新たな改良目標として、美味しさに関係する「脂肪の質」に着目し、客観的評価手法の確立と普及に取り組み、遺伝的能力評価に向けた体制づくりにも着手しています。今回は、これらの成果をより確実なものとしていくこととし、開催テーマを「和牛新時代 地域かがやく和牛力」として取り組みます。

まず、種牛能力については、繁殖牛として求められる基本的な能力であり、効率的な和牛生産を目指すうえで欠かすことのできないものです。とりわけ繁殖能力の向上については、引き続き、全国の繁殖雌牛集団における平均分娩間隔を400日以内にすることを目指し、分娩間隔の育種価をはじめとする繁殖能力に係る情報の生産現場での活用を推進します。また、種牛審査標準に基づく優良雌牛の選抜、保留を通じ、生産基盤の強化に取り組むとともに、種牛性の向上、すなわち、強健で、飼いやすく、連産性と哺育能力に優れ、飼料の利用性のよい雌牛集団の造成を目指します。

また、それぞれの地域の飼育環境に適応し、地域で代々保留されてきた特色ある遺伝資源を発掘し、活用していくことは、種牛能力の改良はもちろん、遺伝的多様性の維持・拡大にもつながり、将来の和牛生産と改良を担保するための重要な取り組みとなります。そこで、これまで各地で進められてきた系統再構築や地域の特色ある牛づくりをさらに充実させていくとともに、新たな系統や育種素材の発掘も行い、それぞれの地域に固有の遺伝資源の確保と活用を進めていきます。このような取り組みにより、全国で多様な遺伝資源を確保するとともに、系統の特色を遺伝的に固定し、魅力ある集団の構築につなげていきます。

歩留に代表される肉量と、脂肪交雑に代表される肉質については、遺伝的能力と肥育技術の向上により、高いレベルに到達しました。今後は、生産、流通、消費の動向を見据えて、効率的な牛肉生産に加え、食味性の向上に重点を置いた遺伝的改良と飼養管理技術の研鑽が求められています。和牛独特の風味があり、口溶けが良く、食味性の向上が期待される「脂肪の質」の改良体制の構築も促していきます。また、牛肉の一般成分としての水分、脂肪、タンパク質のバランスも和牛肉の美味しさに関連していることから、和牛肉の新しい価値観の創造につながるような、適度な脂肪含量で、交雑脂肪の形状も考慮した評価を追究します。

また、前回大会は復興特別出品区「高校の部」を付帯行事として開催しましたが、出品に向けて取り組む中で、地域内での技術支援や交流も深まり、担い手育成の環境整備にも一翼を担ったことから、今回は、新たに「高校及び農業大学校」の部を設定します。

これらの狙いの実現にあたっては、育種組合・改良組合をはじめとする改良組織活動が何よりの推進力となります。組織活動を活性化させると同時に、歴史や伝統、技術を伝承しながら未来を託す担い手を育み、また、地域を牽引する技術員も養成しつつ、地域全体での取り組みを推進します。

和牛は歴史と風土に培われた我が国固有の財産であり、日本の食文化を代表する食材として、国内外から高く評価されています。こうした評価を確かなものにするには、現状に留まることなく、常に成長と発展が求められます。本共進会を通じて、生産、流通、消費が相互に理解を深めつつ、ともに和牛の魅力の向上を考える契機となるよう臨みます。
食料、資源をめぐる動きが世界的規模となり、さらに厳しさを増すなか、和牛が我が国の食と農を支える基幹産業として、将来に亘る成長を実現するために、繁殖、肥育両面から生産効率を向上させ、更なる和牛の魅力の向上と発信を目指します。